藤子・F・不二雄のパラレル・スペース
本作はWOWOWで2008年に放送された藤子・F・不二雄の短編のテレビドラマ化。各話30分で全6話です。
第1話 値ぶみカメラ
監督:箭内道彦
原作をそのまま映像にしたような不思議な感覚と、テンポ良い展開でこの「藤子・F・不二雄のパラレル・スペース」シリーズの中でも質の高い作品です。
個人的には、話としてはシリーズ中でも、SFという意味でもさほど優れたものには思えませんでしたが、それを補って余りあるビジュアル的魅力、見ていて楽しい作品でした。本編後のキャストへのインタビューも、それぞれが様々な価値観で「値ぶみカメラ」を認識しているのだということが分かり興味深い。彼らそれぞれが別々の角度から見た本作を知ることができ、それがより一層この作品への魅力を深めています。
第2話 あいつのタイムマシン
監督:三木孝浩
話は、SFが好きな人は好きだと思いますが、この回は平凡。確かにしっかりとしたつくりの作品ではありますが、テンポもいまいち。悪く言えば「良く出来た学生映画」、よく言えば「普通の日本のドラマ」。
ただ、話自体はSF好きな人は見て損は無いと思います。
第3話 ボノム ~底ぬけさん~
監督:藤本周
話がすばらしい。宗教の経典に登場するような人物の話なのだが、そのアイデアは現代でも通じる。しばらく前にScientific Americanを読んだ際に、将来的に「自由意志が存在しない」ことが発見される可能性があるなどということも書かれていた。今でこそこんなことを言うと人に引かれるが、皆もっと本作の主人公のように人とは何か、もう一度考え直しても良いかもしれない。
本作の主人公のすごいところは、その自分で考えた、世間一般では受け入れられていない概念を自ら実行しているところである。自分の頭の中の考えを周りの人間の考えをよそに実行しているということは、「Watchmen」のOzymandiasや、はたまたエイリアンシリーズのエイリアン、もっといえば、映画に出てくる悪役のしていることとなんら変わりはない。
もっとも、本作の主人公は他人に直接的危害を加えない、そして自分は他人からの危害を受け入れ、他人が何かを必要としているならば差し出すという、究極の善人的人間なのだが。(「的」としたのは勿論「悪を見て見ぬ振りをするのは悪」だからである。といってもそれも何を悪とするのかの定義で変わるが。)
作中劇としてこの話の原作が用いられており、しかも作中劇が劇中の主人公達の出来事に絡み合っているあたりの演出は、上手い。國村隼演じる主人公の、あまり周囲の出来事を気にしていない風な、何か皆と離れたところから起きていることを静観する様な仕草も味があった。
是非見るべき作品。
SFファンにはお勧め。厳しく書いたけれども、この前半の3話だけでも十二分に楽しめる。
残りの3話の感想はまた今度。
オススメ度
ストーリー
第1話 ★★★☆☆
第2話 ★★★★☆
第3話 ★★★★★
演出
第1話 ★★★★☆
第2話 ★★☆☆☆
第3話 ★★★★☆
総合 ★★★★☆
by メインクーン
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