2009年10月16日金曜日

ガタカ

1997年 米

監督:アンドリュー・ニコル
主演:イーサン・ホーク
   ユマ・サーマン
   ジュード・ロウ

音楽:マイケル・ナイマン


私の好きな映画オールタイムベストが本作「ガタカ」。

・ストーリー・

DNA操作して優秀な子供を作るのが「普通」な近未来、自然出産で生まれた「不適合者」はただ不適合者であるというだけで差別され、希望する職業につくことができない。

イーサン・ホーク演じる主人公、ヴィンセントは「不適合者」。目が悪く、心臓に問題を持ち、30歳で死ぬと診断されていた。このことから彼の両親は次の子を遺伝子操作で出産。「適合者」で、健康な体で身体能力にも優れている。

数々の身体的問題を抱え、弟にはいつも水泳で負けていた主人公だが、彼には宇宙飛行士となる夢があった。彼はその夢をかなえるために努力をする。だが、「不適合者」である彼が宇宙飛行士になることはできなかった。

ジュード・ロウ演じるジェロームは、元水泳選手。銀メダルをとるものの、金メダルが取れなかったことに苦しみ自殺未遂をする。下半身が麻痺した彼は生きる希望を失い、「適合者」である自らの血液、指紋、皮膚、毛髪、尿などを「不適合者」に与えるDNA偽装に手を出す。ヴィンセントは「適合者」を装い宇宙飛行士になる夢をかなえるために彼と会う。

ヴィンセントは自らの身長を変え、整形までし、ジェロームに成りすます。「適合者」として宇宙局で職に就いたヴィンセントだが、宇宙局内で殺人事件が起き…


・感想・

私がこの作品を好きな理由は、主人公の努力である。主人公は皆よりも劣っており、差別の対象ともなっている。そんな彼が自分の夢を目指すために惜しまず努力をする(しかしねちねちした描き方ではない)。もちろん努力だけでどうにでもなるほど現実はあまくはない。本作の主人公も、本当の自分ではない他人を装いながらも夢に近づいてゆく。

そんな世界の中で作中に出てくる多指症のピアニスト、そして彼の演奏する「Impromptu for 12 Fingers」、12本の指のための即興曲が印象に残る。

「スター・ウォーズ」、「マトリックス」、SFの超大作には「選ばれし者」がつき物だが、本作の主人公は「選ばれなかったもの」だ。その彼が夢を目指して頑張るのである。必死で夢を追い求めるヴィンセント、その一方で、「選ばれし者」だったが生きる夢も希望も失ったジェロームとの友情。これは楽な道を選び成功が手に入ることが「夢」となっている現代のエンターテイメント作品とは違う、人間のドラマである。

そして、SFの形はとっているが、テーマは現代社会がもつ問題とさして変わりは無い。醜さや奇形などによる差別、偏見、(脳も含め)身体機能が「一般」から外れることでつけない仕事もある。それらは悲しいことに昔から存在し、もっと悲しいことに将来も変わりはしないだろう。遺伝子操作もDNA登録も現実になりつつある現代、この作品がSFだからと毛嫌いしないで是非皆さんに見ていただきたい。

この映画は音楽無しに語ることもできないだろう。「ピアノ・レッスン」で有名な作曲家マイケル・ナイマンのシンプルだが感動的なサウンドトラックは涙を誘う。本作「ガタカ」ではゴールデングローブ賞の最優秀映画音楽賞にノミネートもされている。

統一感がある色合い、SF過ぎない古く新しいデザインや、印象に残るカット割りもすばらしい。

結局今回レビューを書きながら全編見直してしまった。いくつになっても泣ける。


・オススメ度・

ストーリー ★★★★★
音楽    ★★★★★
感動    ★★★★★


総合    ★★★★★


Blu-ray版

(初収録のドキュメンタリーが2種類ついているそうだ。私もこれから注文しようと思う。)

DVD版

(ちなみに私が持っているのはショートケース版だ)

Superbit版



サントラ



・トリビア・

・タイトルのガタカ、「GATTACA」はWikipediaによると「DNAの基本分子であるguanine(グアニン)、adenine(アデニン)、thymine(チミン)、cytosine(シトシン)の頭文字」とのこと。スタッフロールでもこれらの文字が強調されている。

・本作の監督、アンドリュー・ニコルはジム・キャリー主演の名作「トゥルーマン・ショー」の脚本を担当している他、先日当ブログにもレビューが書かれたターミナルでは原案・製作総指揮をつとめている。彼は自身が監督した「シモーヌ」の主演女優レイチェル・ロバーツと結婚している。

・本作の翌年の1998年5月1日には、イーサン・ホークとユマ・サーマンが結婚、2004年にイーサンの浮気で離婚している。

名探偵モンクでおなじみのトニー・シャルーブの若かりし姿も見ることができる。

・「24 -TWENTY FOUR-」に出演し、ニーナ役の共演者サラ・クラークと結婚したことでも有名な(?)ザンダー・バークレーが良い味を出している。DVDの特典でNGシーンがあるのだが、そこではコメディアンっぷりも発揮している。こちらは今も昔もあまり変わらない容姿である。

・検問があるトンネルは、ブレードランナーにも用いられた有名なトンネル。The 2nd Street Tunnel Los Angelesで検索すれば画像も見つかる。

・マイケル・ナイマンは日本映画「ナビィの恋」にも楽曲提供をしている。変わりどころではセガのゲーム「エネミーゼロ」や、山本耀司の94年のパリコレにも作曲をしている。



by メインクーン

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